根本的な治療法が見つかっていない難病と向き合う患者さんは、身体的な苦痛だけでなく、先行きが見えない不安と深い悲しみを抱えています。当事者は生活の一変に伴い、心の中でさまざまな葛藤を繰り返しているため、周囲の関わり方ひとつで心の安定が大きく左右されます。特に患者さんの身近でケアを行う看護師は、日常的な声かけにおける細やかな配慮が不可欠となります。
まず、良かれと思って使いがちな「頑張って」という励ましの言葉は、患者さんを精神的に追い詰める刃になりかねません。すでに病気と懸命に向き合っている相手に対して、さらに努力を求めるような表現は、過度な負担を感じさせてしまいます。安易な応援ではなく、これまでの苦労をねぎらい、ありのままの状態を受け止める姿勢を示すことが大切です。
また、相手の苦しみや不安を「大丈夫」などと軽視するような言葉・態度は絶対に避けるべきです。他者から見れば小さな変化でも、当事者にとっては深刻な事態であるケースは多くあります。主観的な判断で相手の訴えを軽んじることなく、直面している困難を理解しようとする真摯な傾聴の姿勢は、思いやりの看護の基本です。
そして、患者さんが自分らしく生きるための選択や、その時々の意思を何よりも尊重することも忘れてはなりません。病状の進行によって多くの決断を迫られる中、医療従事者側の考えを押し付けるのはNGです。できる限り、懸命に生きている患者さんの願いを優先させるのが、精神的なストレスの緩和にもつながります。